早くに結婚して、右も左もわからないまま東京での暮らしがはじまりました。
友達もいない、知り合いもいない。夫は激務で単身赴任、子育ては毎日ひとりで。お金にも余裕はなく、夫婦関係もうまくいかなかった時期がありました。
孤独感と不満を抱えながら、それでも毎日をなんとかやり過ごしていた、そんな頃のことです。
外に出ることで、埋めようとしていた
あのころの私は、とにかく外へ出かけていました。
築40年ほどのボロボロの社宅。家賃は格安だったけれど、とにかく家にいたくなくて。しょっちゅう外食をして、お店に入ればとくに必要でもないものを買って。家に帰るとすぐ飽きて、また外へ。その繰り返しでした。
今思えば、外に出ることで孤独を紛らわせようとしていたんだと思います。でも、何をしても何を買っても、本質的には満たされなかった。心のどこかにいつもぽっかりと穴が開いているような感覚でした。
小さな変化のはじまり
そんな中で、ふと思い立って収納に使っていたカラーボックスを処分しました。代わりに、ずっと気になっていた白いチェストを思い切って購入したんです。
たったそれだけのことなのに、部屋の空気がすっと変わった気がしました。「あ、これが私の好きな空間だ」と初めて感じた瞬間でした。そしてそのとき初めて、理想の暮らしへの具体的なイメージが湧いてきたんです。
その頃、夫がブラックな働き方に限界を迎えて転職を決意。次の仕事が決まっていない状況の中で、私たちは逃げるように次の住まいを探し始めました。
以前から気になっていたタワーマンションに、たまたま空きが出た一室。払えるかどうか不安もありましたが、思い切って契約しました。その後、夫の転職も落ち着き、生活は少しずつ安定していきました。
転機は、思いがけないところからやってきた
タワーマンションでの暮らしがはじまってしばらくして、2人目を妊娠しました。
でも初期からの切迫早産で入院、8ヶ月もの寝たきりの生活を強いられることになったんです。
外に出られない。買い物にも行けない。それまでの「外で埋める」という方法が、完全に使えなくなりました。
はじめは正直、苦しかった。でも動けないからこそ、子育ての合間にひたすら本を読む日々がはじまりました。自分はどんな部屋で、どんな毎日を過ごしたいのか。何があれば、心地よくいられるのか。どんな価値観で、どんな生き方をしたいのか。ベッドの上で、そんなことをぼんやりと考え続けていました。
出産後、落ち着いた頃に上層階へ引越し。景色もよく、あのころ思い描いていた暮らしに近づいたはずでした。
気づいてしまったこと
でも、コロナ禍の中でふと気づいてしまったんです。
住まいは整ったはずなのに、心はちっとも満たされていなかった、と。夫婦関係、ママ友との関係、ひとりで抱えていた育児。タワーマンションの高層階で、私はますます孤独感を深めていました。
本当に手に入れたい家庭って、どんなものだろう。
本当に望む暮らしって、何だろう。
そんな問いを抱えながら、子育ての合間にひたすら本を読んでいました。そんなときに出会ったのが『フランス人は10着しか服を持たない』という一冊。ものを減らし、本当に大切なものだけを残すという考え方が、するっと心に入ってきたんです。
そこから断捨離と片付けにどっぷりハマって、ひたすら無駄なものを手放す日々がはじまりました。手放すたびに、部屋が、そして心が、少しずつ軽くなっていくのを感じました。
そう自分に問い続けるうちに、あれほど憧れたタワーマンション生活にも、だんだんと違和感を覚えるようになっていきました。
本当の暮らしへ
その後、子どもの学校でのトラブルをきっかけに、引っ越しを決意。離婚を覚悟して新しい住まいを探す中で、「やっぱり家族でリスタートしたい」という気持ちにたどり着き、郊外の普通のマンションへ移りました。
どこにでもある、普通の部屋。でもそのとき私は初めて思ったんです。「この中でも、理想の暮らしは作れる」と。
子育てしやすい環境に移ったことでメンタルが安定して、インテリアにこだわったり、生活習慣を見直したり。断捨離を重ね、本当に好きなものだけを手元に残していく。華やかさではなく、地に足のついた自分らしい暮らしを、ひとつずつ丁寧に作っていきました。
今では、おうちで過ごす時間も、家族で過ごす時間も、ひとり時間も。どれもが特別で、大切なものになっています。
気づいたら、お金も整っていた
暮らしが整っていくにつれて、不思議なことが起きました。お金の使い方が、変わっていったんです。
もともと浪費するタイプではなかった私ですが、あのころはバランスを崩していました。食費や生活費は節約するのに、意味のない交際費や外食費が多かったり。家ではなく、外に向けてお金を使っていた。満たされていなかったから、見栄を張ったり、心の穴を埋めるようにして、気づかないうちに無駄遣いをしていたんだと思います。
それが暮らしを整えはじめてから、少しずつ変わっていきました。夫の転職、2人目の出産、コロナ禍。生活環境が変わるたびに、家計と向き合う機会が増えていきました。そしてコロナ禍をきっかけに、真剣にお金の勉強をはじめたんです。固定費の見直し、保険の見直し、ふるさと納税の活用——自分が知らなかったことがこんなにたくさんあることに、正直衝撃を受けました。
そこから「貯蓄から投資へ」という考え方に出会い、つみたてNISAをスタート。少しずつ、お金を「守る」だけでなく「育てる」意識に変わっていきました。
何かを買おうとするとき、「これは本当に必要?」「これを見るたびにときめく?」と自然に考えるようになりました。外食も、本当に行きたいときだけ。ものも、本当にときめくものだけ。節約しようと頑張ったわけではないのに、気づいたらお金が貯まっていました。
心が満たされると、本当に必要なものが見えてくる。そうなると自然に、お金の使い方も変わっていく——そのことを、身をもって実感しています。NISAや家計管理の具体的なお話は、またあらためて綴りますね。
読んでいるあなたへ
あのころの私は、心の穴をお金で埋めようとしていました。買えば満たされる、出かければ楽になる。そう思っていた。でも違った。お金を使っても、いくら外にエネルギーを向けても、穴は埋まらなかった。本当は逆だったんです。
心が満たされてはじめて、「本当に欲しいもの」が見えてくる。必要なものと不要なものの境界線が、自然とはっきりしてくる。優先順位もはっきりとわかってくる。自分自身を理解できるように。そうなったとき、お金の使い方は静かに、でも確かに変わっていきます。
暮らしを整えること。自分の心を満たすこと。それは節約でも我慢でもなく、豊かさへの、いちばん近い道だったと今は思っています。
完璧じゃなくていい。小さな一歩で十分。あなたのペースで、ひとつずつでいい。